【ルームフレーバー.com連動企画】記念日をもっと愉しむ方法

【ルームフレーバー.com連動企画】だから、記念日…

海と風の記念日

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忙殺された日々を送っていると必ず、何か大事なことがあるような気分が持ち上がる。それはさわさわと音をたてるサトウキビ畑だったような、もしくはもっと海に関係するものだったような気もする。

私が小学生だったころ、母は学校を休ませて仕事で出かける沖縄へ私を一緒に連れて行った。
島は今まで見たことのない美しい色の海に囲まれていた。エメラルド・グリーンという色も、インディゴブルーの空の色も私にとっては、はじめて知る色彩だった。

母は仕事だった為に一緒に遊んだわけではなかったけれど、地元の友人に私を預け夜だけ戻ってきては、「今日はどうだった?」と尋ねた。母はジャーナリストだったから、沖縄について語りたいことは、遠くまで広がる珊瑚礁の白さやピーナツで出来たジーマミー豆腐の食感についてでもなく、基地の側にある小学校の窓は定期的にガラスが細かく震え、騒音で一日中開けることもできないのだ、といった類のことだった。

母の熱弁に適当に相槌を打ちながら、私にはもっと自分の中で語りたい風景があったのだ。もっと言葉になりそうもない、ましてや記事になる事などありえない、だけれどもかなり大切なことだ。

帰りが近づいた頃「ここに住ませて。」と懇願した。母は少しびっくりしていたがすぐに冷静に、「自分で大人になったら住めばいいじゃない。こっちの大学を選んでもいいんだし。」と言った。
私はまだ幼く一人で暮らすには不十分だと感じて‥母の言う通りいつか大人になったらここへ戻ってこよう‥そしてその時まで、この光の加減で変わる海の色と、風がさとうきびをなでる音を覚えていよう‥たとえ全てを忘れて大人になってしまっていても、今の気持ちを思い出すことができるように、海と風に印をつけた

その日がわたしにとっての、海と風の記念日だった。

大人になった私は心配していた通り、どうしてなんだろう、すぐに忘れてしまうのだ。
その時沖縄で何を思ったか。
わたしの海と風の記念日は、一年に一回定期的にやってくるものではない。それでも一度印をつけたから、いつでも必要なときにやってくる。
光る波やざわめく風で知らせてくれる。答えの出ないことや言葉では表せられないことの中に、真実が隠されているということを伝えてくれる。

そしてまた思い出すのだった。
時には遠くの島で。時にはすぐ近くの海で。

By  デザイナー   谷合緋沙子さん
コラム「東京のお家、モロカイのお家」
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